宮津市議会初の「総括質疑」

9月24日の日本三景の天橋立と大江山連峰
今年の雲は特徴的な形をしていますが…
議場から眺める景色は最高です。
今日は会派毎に補正予算と2020(令和2)年度決算に関する初の「総括質疑」を行いました。
今回はトライアルなので、動画をお見せできないのが残念ですが…
個別詳細な議案審査と異なり、鳥瞰して市政を問う「総括質疑」に各会派みな注力して特徴的な内容でした。
ただ、委員間討議に手間取り、タイトなスケジュールなど課題も沢山見つかりました。
9月定例会終了後、議会活性化委員会で議員と理事者の意見を集約し、改善作業に入ります。
尚、無所属クラブの総括質疑は以下3点です。
原稿を添付しているので、是非ご覧ください。
難しそうな議案を分かりやすく紐解いて質問しています。
①議第56号一般会計の「宮津市第2期行財政運営指針」に基づく財政改革。
②議第57号土地建物造成事業特別会計の「つつじが丘団地」の宅地販売。
③議第70号水道事業特別会計「水道事業会計利益」の処分及び決算の認定。
2021年9月定例会 「総括質疑」の無所属クラブ原稿 ①/4
令和2年度決算の以下3点に関し、通告に基づき無所属クラブの総括質疑を行います。
①議第56号一般会計の「宮津市第2期行財政運営指針」に基づく財政改革。
②議第57号土地建物造成事業特別会計の「つつじが丘団地」の宅地販売。
③議第70号水道事業特別会計「水道事業会計利益」の処分及び決算の認定。
1.議第56号一般会計の「宮津市第2期行財政運営指針」に基づく財政改革
先ず1点目の質問「宮津市第2期行財政運営指針」に基づく財政改革に関してお尋ねします。
今から3年前の2018年10月5日に行われた全員協議会の「今後の財政見通し」で、2007年3月に破綻し、再建中の北海道夕張市に次ぎ、宮津市は全国ワースト2の財政状況にあるとご説明を頂きました。
その後、理事者から財政健全化施策の提示があり、財政健全化に向けた取り組みが始まり、令和2年度の財政指標は少し改善しました。
しかし、地方債残高は4年連続で増加し、財政状況は未だに極めて厳しい状況にあります。
令和2年度決算に関する財政指標の中で、「将来負担比率」と「実質公債費比率」をピックアップして質問します。
(1)将来負担比率
将来負担比率は前年度243.0%から32.9%改善し、210.1%になりました。
因みに、早期健全化基準は市町村で350%、都道府県で400%です。
将来負担比率は、借金や職員の退職金など今後支出が見込まれる費用のように将来負担しなければいけないお金が、1年間の収入に対してどれくらいあるのか、将来 の負担が大きすぎないかを判断するための国が定める基準です。
一般に家を建てる時のローン総額は年収の5倍程度と言われますが、行政に於ける将来負担比率が年収の 350%つまり3.5 倍を超えると危険信号が出されるという訳です。
宮津市の将来負担比率210.1%に関して、京都府内と全国での順位と分析、目標値達成までのプロセスをご教示願います。
(2)実質公債費比率
実質公債費比率の3ヵ年平均は、前年度20.0%から2.1%改善し、17.9%になりました。
因みに、早期健全化基準は25%、財政再生基準は35%で、今般、18%を下回ったので、借金をする起債にあたり、京都府の許可がいらなくなりました。
実質公債費比率とは大雑把に言うと、宮津市に入ってくる税金や地方交付税などの内、何%が借金の返済に使われているかを示す値です。
今から16年前の2005年度から使用されるようになった新しい指標で、過去3年間の平均値で示されます。
宮津市の実質公債費比率17.9%に関して、京都府内と全国での順位と分析、目標値達成までのプロセスをご教示願います。
2021年9月定例会 「総括質疑」の無所属クラブ原稿 ②/4
※感想
ご答弁ありがとうございました。
2007年3月に夕張市が財政破綻したことを機に、国は地方自治体の財政状況をより明確にする為、今回ピックアップした「実質公債費率」と「将来負担比率」に「実質赤字比率」と「連結実質赤字比率」を加えた4つの財務指標を2008年度から全国の自治体が総務省へ報告する義務を課しました。
その指標は一般会計と特別会計に留まらず、各々が一部事務組合や広域連合、地方公社や第三セクター等の決算も加えています。
これは、地方自治体が昔と異なり、事業を多角化したが故に多くのリスクを負っている現実を物語っていると思います。
(3)宮津第2期行財政運営指針
将来の予算編成で、義務的経費、投資的経費、その他経費の歳出に「宮津第2期行財政運営指針」を活かす方法をお尋ねします。
殊に建設債のキャップ設定に関しては、本年3月定例会に於いて議員の間で「理解度」が別れましたが、改めて、その意義と計画など分かりやすくご説明願います。
※第2質問
私は、3月定例会で可決された宮津第2期行財政運営指針を本年6月定例会の一般質問で取り上げ、「これまでのハコモノを中心とするハード面への長期投資が宮津市の財政状況を悪化させた大きな要因だと指摘しました。
宮津第2期行財政運営指針のトピックスの一つは、ハコモノの反省から生まれた対策として今年度から10年間に亘る建設地方債の総額の上限を55億円、年平均で5.5億円とする「キャップ制度」を取り入れたことだと思料します。
改めて、この「キャップ制度」に至った経過や過去の反省点などをご教示願います。
※第3質問
宮津第2期行財政運営指針の中で、財政状況の健全度を測る重要指標は期間終期の目標値を以下の通り設定しています。
①建設地方債残高は65億円です。
この数値は2019年度決算時の11,066百万円のほぼ半分になります。
②経常収支比率は95.0%以下です。
この数値は2019年度決算時が98.8%から3.3%ダウンします。
ただ経常収支比率の適正水準値は、一般に70~80%だと言われています。
これを超えるとその地方公共団体は弾力性を失いつつあると考えられるので、その原因を究明し、経常的経費の抑制に留意しなければならない状態だということも申し上げておきます。
③実質公債費率は13.0%以下です。
この数値は2019年度決算時の20.0%から7%ダウンします。
因みに、総務省が公表している2018年度に於ける全国の市の平均値は5.1%です。
④将来負担比率は150%以下です。
この数値は2019年度決算時の243.0%から93%ダウンします。
2021年9月定例会 「総括質疑」の無所属クラブ原稿 ③/4
因みに、2018年度における全国の市の平均値は9.8%です。
以上4つの財政状況の健全度を測る重要指標の10年後の目標値に関して、市長の決意をお答えください。
(4)増収に向けた選択と集中する施策
増収に向けた選択と集中する施策についてお尋ねします。
令和2年度決算は、コロナ禍の影響で法人市民税、固定資産税、入湯税など税収の減少が目立ちました。
①個人市民税
しかし、個人市民税が増えています。
その要因を分析し、今後いかに活かしていくかご教示願います。
②地籍調査
先日行われた予算決算委員会の質疑でもご答弁がありましたが、今後、地籍調査への注力による固定資産税の増収を図る戦術を伺いました。
その詳細を時系列でご教示願います。
2.議第57号土地建物造成事業特別会計の「つつじが丘団地」の宅地販売
次に2つ目の質問、議第57号土地建物造成事業特別会計の「つつじが丘団地」の宅地販売について、お尋ねします。
前年度は販売価格を下げた為、数年振りに販売実績がありましたが、令和2年度は販売実績がなく、実質収支▲142百万円となりました。
本事業に関する経緯、実質収支▲142百万円の中身、経理上の仕組み、綾部市など周辺市町の成功事例との比較や分析、今後の改善策をご教示願います。
3.議第70号水道事業特別会計「水道事業会計利益」の処分及び決算の認定
最後に議第70号水道事業特別会計「水道事業会計利益」の処分及び決算の認定について、お尋ねします。
先日行われた予算決算委員会の質疑で、今後50年間に亘り毎年約650百万円の財源不足が続くとご答弁がありましたが、令和2年度に水道料金を3割アップしても、厳しい経営状況が予想されます。
今後更新が必要な設備の詳細や抜本的な対策などをご教示願います。

 

※第2質問
宮津第2期行財政運営指針の「財源不足に向けた対策の事務事業見直し」に関する説明に於いて、水道や下水道の公営企業も継続的な収入の減少が予想され、将来に向けた適正なあり方を検討する旨が明記されています。
市民や有識者を交えた「上下水道事業のあり方委員会」のような組織を設立する計画を視野に入れているのかお答えください。

4.所見
最後に無所属クラブの所見を述べさせて頂きます。
2021年9月定例会 「総括質疑」の無所属クラブ原稿 ④/4
所管別質疑で伺い、今回もご答弁頂きましたが、一般会計以外の水道事業会計で改善策をとらなければ、今後50年間、毎年6.5億円の財源不足に陥るという大変な状況に驚きました。
日本にいれば、蛇口を捻れば当たり前に水を飲めますが、海外で水道水が飲める国は殆どありません。
また、パリやロンドンの水道事業の民営化と失敗が示すように、老朽化した施設の更新や維持は多大な費用が嵩みます。
「水の値段は一体いくらが妥当なのだろう?」と自問自答することがあります。
更に、地方自治体は、昔と異なり事業を多角化したが故に多くのリスクを負っている現実を踏まえ、様々な会計の中身までしっかり把握することが如何に大切であるか考えさせられます。
人口減少が続き、一人当たりの費用負担が増加することは避けられません。
国の財政も厳しさを増し、コロナ禍対応で更に将来への借金が増えています。
宮津市のインフラを如何に維持していくか、この先どうやって財源を捻出していくのか悩みは尽きません。
しかし、こんな時だからこそ「鳥の目と虫の目と魚の目」マクロとミクロとトレンドという視点を持つことが今の宮津市に求められていると思います。
行財政運営指針の質疑では、今年度から10年間で年平均5.5億円以下の建設地方債発行の制限をかける、いわゆる「キャップ」を堅持し、タガがゆるまないよう引き締めなければ「財政再建団体」への懸念が常に頭から消えません。
少子高齢化に歯止めがかからない今日において、子や孫子、その後々の世代にまで、借金の負担を残さないようにする責務が我々にはあります。
私たち議員は、行財政運営指針の進捗をチェックする責務を果たさねばなりません。
皆さんは「為せば成る」という言葉は聞いたことがあると思います。
この為すは「行う」ということで、成るは「うまくいく」ということです。
今でも「やろうと思って頑張ればできるようになる」という意味で、ごく日常的に使われています。
実はこれは「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」という和歌の一部です。
江戸時代中期に現在の山形県にある米沢藩の藩主だった上杉鷹山が次期藩主に贈ったものです。
もともと米沢藩は上杉謙信を藩祖と仰ぐ由緒ある藩でしたが、関が原の合戦で敗れて、石高を大幅に減らされたにもかかわらず、藩士の数を減らさず、名家の伝統維持のための費用の浪費をしたため大変な財政危機に瀕していました。
上杉鷹山は、なんとか藩を建て直そうとして、藩内の強い反対を押し切り、藩士を減らしたり、華美な生活を戒めたりするなど経費の削減を行いました。
そして、農政や教育改革を行い、織物などの新たな産業を興し、ほぼ一代で財政再建に成功しました。
「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」という和歌を復唱して、無所属クラブの総括質疑を終わります。