平成29年度 第3回(9月)宮津市議会定例会が終了しました


本会議最終日に平成28年度決算を可決し、私が反対討論で臨んだ「観光商業施設整備事業に係る改修工事費予算執行決議(案)」(宮津市食品卸売センター跡)は10対5で敗れ、可決されました。
私の原稿は以下の通りです。

平成29年度市議第3号「観光商業施設整備事業に係る改修工事費予算執行決議(案)」について、反対の立場から討論致します。
所管の産業建設福祉分科会、及び先の予算決算委員会に於いて、前回の6月議会で付帯決議した「運営主体の明確化と進捗状況の報告」に関し、「希望を込めて事業を進めよう」「万全ではないが一定の条件は満たした」といった賛成意見から「個々の議員ではなく、議会として地元の声を聴取することが欠落したのではないか」「議会は数ではなく、結論ありきの決裁はおかしい」といった議会の在り方に至るまで議論百出しました。
賛否両論なるほどと頷く内容も感じられましたが、以下の3点から未だに相当なリスクを抱えていることを改めて指摘します。
1.運営主体の会社概要
会社名は宮津フードファクトリー合同会社で、代表者名、本社所在地と主な役割などが理事者から説明されましたが、現在、定款作成などの登記申請が準備中で、未だに資本金、役員、人事が不明確なことです。
また、収支計画に於いては、家賃設定が売上高ベースではない為、出店事業者にとって厳しいこと、宮津市街の観光入込客数を年間333千人と定めるも、1日で約70千人が訪れる燈籠流し花火大会や今週末から始まりますが、3日間で約20千人が訪れる和火(やわらび)の数値が勘案されていないこと、売上から粗利益に至る損益計算のみで、借入金や資産を示すバランスシートの観点が欠け、数字の根拠も不明確で、とても金融機関が納得する事業計画ではありません。
殊に、指定管理者制度を導入する方向ですが、市は運営会社から家賃を貰うべきではないでしょうか。
更に、不足分は指定管理で補助していかないと市との関係が見えてこないといった議論が産業建設福祉分科会で討議されましたが、そもそも指定管理に関する議論は、本来、総務文教委員会でじっくり討議される内容だと思います。
2.地元の漁師町自治会の反応
9月5日に自治会役員向けの説明資料を全戸配布し、9月16日に初めての地元説明会が開催されましたが、凡そ120世帯中、約20名の参加者があり、地元の意見が一部審議され、賛成意見が多かったと理事者から説明がありました。
しかし、私や他の議員が地元の方に聴取したところ、賛否両論ありますが、総じて協議期間が短い為、市は工事着手を前提に説明を行い、住民としては「市がやることだから、何を言っても聞き入れないだろう。取り敢えず、交通整理や安全対策などの要望を意見として出した」という雰囲気であったと伺いました。
更に、開店して初めて問題が生じそうな気掛かりな意見を2点伺いましたので、ここで申し上げます。
①本施設では干物焼きや燻製作りを予定していますが、その匂いや煙が屋外に拡散すること。
②不特定多数の集客がある中、住民の生活に与える影響や騒音対策です。
本来なら、地元自治会は市から説明を受け、その後じっくり時間を取って、内容を把握した上で対策を協議し、地元の同意書を取り付けることが行政のあるべき姿ではないでしょうか?
本事業の運営には地元住民の協力が不可欠で、現状では自治会への対応が不十分であると判断されます。
3.生鮮魚介類の販売
出荷した魚は約2時間で鮮度が急激に落ちると言われています。
現在、市内では各漁業生産組合に於いて、魚の浜売りを行っています。
浜売りに行けば、新鮮な魚が買えますが、一般の観光客にとって、生の魚はみやげには不向きだと思われ、当施設は、魚の2次加工品が販売の中心になると推察されます。
店内で競合することも予想され、地元の主婦はスーパーで買うこともできます。
各地の浜売りを禁止し、本施設を浜売りの拠点とすれば、成功する可能性もありますが、漁協や本施設の事情を考えると難しいと思います。
また、魚の仕入れに関する大きな問題は土曜日で、京都府漁連が全て休業になる中、頼りの漁業生産組合も漁師さんも出漁を控える為、前日に買った魚を販売し、結局、冷凍保存品の販売になり、スーパーの仕入れ力に負け、ホテル並みの調理販売になることも予想されますが、果たして旅行代理店が取り扱うでしょうか?
また、鮮魚提供に於いて、地元の魚種・漁獲高を考えると出荷量は限られ、対応が難しいと思われます。
新たなチャレンジ精神で、長年遊休化した卸売センターの施設を活性化すること、現在の市の閉塞感を打開することは大いに進めるべきだと思いますが、現段階では、「市場の原理」に晒されるリスクが高いと判断されます。
9月28日に開催された予算決算委員会に於いて、「国の補助金制度のタイムリミットから判断して、早急に本件を執行すべき」との意見もありましたが、来年3月の竣工から逆算した工事開始日は10月下旬との理事者から答弁もありました。
本来、理事者の皆さんもじっくり腰を据えて事業を遂行したいところだと思いますが、限られた時間の中で可及的速やかに地元と調整し、戦術と戦略を練り直した上で遂行されることを望みます。
先の6月議会に於いても触れましたが、現制度で国からの交付金を取りつけられる理事者のご苦労も大変だと思います。
しかし、竹事業に於いて5年間で約6億円、内、宮津市が約1億円を負担したにも拘わらず、未だに結果が出ないものもあります。
また、最近の各新聞社が「浜町のパイロット事業」や「つつじが丘団地」に関する「税金を投入した事業の採算性や計画性を問う」記事が続いています。
これは、市民の目線に立った警鐘と捉えるべきではないでしょうか?
本件に関しては、上述の通り、未だ流動的と判断される計画や組織体制に加え、地元協議や仕入販売計画の説明が曖昧な進捗状況を鑑み、指定管理者制度の明確化による経営計画等が整うまで、観光商業施設整備事業に係る改修工事予算執行保留の付帯決議は、所管の産業建設福祉分科会に於いて継続して審査することを求めます。
以上の通り、本件について多くの議員の皆様の賛同をお願いし、反対討論を終わります。


因みに、6月議会に於いて会期末4日前に追加で一般会計補正予算「観光商業施設整備事業」(宮津市食品卸売センター)108.6百万円が提案されるも、資料不足等、審議不十分で、7月5日まで異例の会期延長となった折、私の反対討論は以下の通りです。

議第57号 平成29年度宮津市一般会計補正予算(第2号)について、反対の立場から討論致します。
先程の予算決算委員長の報告で、本件に関する審議経過や問題点を簡潔にご説明頂きました。
所管の産業建設福祉委員会に於いて、私は、旅行代理店、不動産会社の商業施設部門、金融機関等に本件を相談し、サラリーマン時代の経験に基づいた意見と具体事例を多数申し上げましたが、殊に以下の4点に相当なリスクを抱えていることを改めて指摘します。
1.本年3月議会で「実施設計段階までに運営主体及び関係者等と詳細を調整された上で、明確に提示されたい」との意見を付したにも拘わらず、地元自治会での説明会が未だ開催されず、事業参加の公募に応じられた12団体が、本年6月7日から週1回を基本に運営会議を始められたばかりで、事業計画、収支計画という肝心要の根幹が定まらず、具体的な目的と内容さえ不明確な状態で、今回の補正予算に計上されたことです。
2.交通量、季節要因、平日と休日の入り込み客比較等、マーケティング分析が無く、目標とする年間売上高2億円、来場者数8万人の根拠がないこと。
因みに、目標値を1日当たりに単純換算すると、売上高約50万円、来場者約220人となりますが、駐車場が30~40台しか確保できない見込みで、観光バスを如何に呼び込むかがカギとなるにも拘わらず、公安上、バス駐車にも課題があることです。
3.道の駅と立体駐車場がある浜町から徒歩で向かう導線としても、海縁の歩道には如願寺川に橋が無く、私有地の調整目途が立っていないこと、「弁当を忘れても傘を忘れるな」と言われる宮津の気候を鑑み、秋口から雨が多く、冬には雪が降る条件で、浜町から徒歩での導線とするには困難であることです。
4.計画案のレイアウトを拝見すると、女子トイレが3人分しかなく、又、本施設の目玉であると理事者から説明ある「練り製品の体験コーナー」は8人しか席がなく、観光バスの人数に対応できないこと、更に、3月議会で予算化された2階のトイレ改修に20百万円計上された通り、レイアウトの改修を変更するだけで相当な費用が嵩むことです。
以上4点が、本件に反対する主な懸念材料です。
本事案は、平成27年に策定された「宮津市まち・ひと・しごと創生人口ビジョン総合戦略」に於いて、平成31年迄に観光消費額を89億円から150億円に引き上げる戦術の一環だと理事者から説明ありましたが、本年3月に閉鎖した公設市場の魚屋さんが既に皆各地に分散して店舗を構えられ、本件に加わることが難しい状況にあること等、選択と集中の観点からチグハグ感が否めません。
平成13年に成立した小泉純一郎内閣に於ける国庫補助金改革と税源移譲による地方分権と、地方交付税の削減による財政再建をセットで行う「三位一体の改革」以来、国からの交付金を取りつけてこられる理事者のご苦労も大変だと思いますが、竹事業に於いて5年間で約6億円、内、宮津市が約1億円を負担したにも拘わらず、未だに結果が出ないものもあります。
「補助金ありき」で事業を推進することなく、戦術と戦略を慎重に練った上で遂行されることを求めると共に、最近、民間人を採用する行政が増え、事業計画の遂行状況で目標値を達成できない場合は、途中でも撤退する「コベナンツ条項」を導入する自治体が出始め、宮津市でも事業推進に勘案・徹底頂き度いと思います。
また、事業参加の公募に応じられた12団体の内、若手の皆さんの意識を尊重することも大切ですが、調査機関のデータによると、新規飲食業の起業2年以内の撤退率が約50%という統計値もあり、全体の事業計画も定まらずに成果を求めることも懸念されます。
最後に本件に関し、現代経営学「マネジメント」の発明者と称され、2005年に95歳で亡くなったアメリカの経営学者「ピーター ドラッカー」の言葉を3点申し上げます。
1.成果をあげる者は、新しい活動を始める前に必ず古い活動を捨てる。
2.ビジネスには2つの機能しかない。マーケティングとイノベーションである。
3.コミットメント(責務)なしでは、単に約束と希望があるだけで、そこに計画はない。
以上の通り、本件について反対し、討論を終わります。

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